債権の消滅時効は一般の民事債権で10年、一般の商事債権(商行為によって生じた債権)で5年となっています。
一部例外として1年~3年で時効となるものがありますので注意が必要です。
また、裁判の判決や裁判上の和解などにより確定した権利については、消滅時効は10年となっています。
この消滅時効の期間については、平成29年(2017年)5月26日に可決成立し平成29(2017年)年6月2日に交付された「民法の一部を改正する法律案」により、2020年6月2日までに施行されます(詳しくは後述します)。
時効により債権が消滅することを防ぐためには、時効を中断させる必要があります。
消滅時効の期間
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- 一般の民事債権
- 10年
例:個人的な金銭の貸し借りなど
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- 裁判所により確定した権利
- 10年
例:判決、裁判上の和解、調停成立など
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- 一般の商事債権
- 5年
例:企業間の商取引、会社が行う貸し付けなど
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- 短期消滅時効(3年)
- ・医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権
・工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権
・弁護士又は弁護士法人、公証人が職務に関して受け取った書類についての責任
・不法行為に基づく損害賠償請求権
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- 短期消滅時効(2年)
- ・弁護士又は弁護士法人、公証人の職務に関する債権
・生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に掛かる債権
・自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権
・学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権
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- 短期消滅時効(1年)
- ・月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料にかかる債権
・自己の労力の提供又は演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に掛かる債権
・運送賃に掛かる債権
・旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席料、入場料、消費物の代価又は立替金に掛かる債権
・動産の損料に掛かる債権
・遺留分減殺請求権
消滅時効を中断させるには
債権が消滅時効となるのを防ぐには、民法の定める方法によって「時効の中断」を行う必要があります。
時効中断の方法としては、主に(1)請求 (2)差押え・仮差押え又は仮処分 (3)債務の承認の3種類があります
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- (1)請求(民法147条1号)
- ・裁判上の請求(訴えの提起)(民法149条)
- ・支払督促(民法150条)
- ・和解及び調停申立(民法151条)
- ・破産手続き等(民法152条)
- ・催告(内容証明郵便など)(民法153条)
- ※ 催告は時効の中断ではなく、6ヶ月間時効の完成を猶予することなので、6ヵ月以内に訴えを提起するなどの手段を講じる必要があります。
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- (2)差押え・仮差押え又は仮処分(民法147条2号)
- 債権者が債務者に対し強制執行として差押を行ったり、仮差押え、仮処分等の保全行為など
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- (3)債務の承認(民法147条3号)
- 債務者が債権者に対し、権利が存在することを知っている旨を表示すること
債務の一部の支払いがあったり、支払い猶予の申し出、債務者が債務の存在を認める旨の書面を作成し債権者に交付するなど
消滅時効の起算点
消滅時効には起算点があり、原則的には権利行使できるときから時効は進行します。(民法166条1項)
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- 貸金返還請求権
- 返済日が決まっていればその日が起算点、決まっていなければ貸付を行った日が起算点となります。
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- 工事請負代金
- 支払期日が決まっていればその日が起算点、決まっていなければ工事が完成した日が起算点となります。
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- 賃金債権
- 給与については、給料日が起算点となります。
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- 不法行為に基づく損害賠償請求権
- 損害及び加害者を知った時が起算点となります。
平成29年6月2日に交付された民法改正について
施行日は、「一部の規定を除き、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日」となっていますので、2020年6月2日までに施行されます。
今回の改正は、明治29年に民法が制定されて以来の大幅な契約に関する法律の改正となります。
その中で、消滅時効に関する改正のは次の通りです。
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- 5年に短縮+職業別の短期消滅時効規定を削除
- 現行の民法の消滅時効は前述のとおり、権利行使できるときから10年間ですが、改正案では、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないときにも時効により消滅するとの規定が追加されます。
多くの場合債権者は自らが債務者に対して権利行使しうることを知っていることが多いと思われますので、事実上債権の消滅時効は5年に短縮されることになります。
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- 生命身体侵害による損害賠償債権の消滅時効期間
- 従前の不法行為による損害賠償請求権については、生命身体の侵害とその他の侵害とで区別することなく一律に3年間の消滅時効となっていましたが、生命身体への侵害に対する損害については、被害者保護の必要性から加害者及び損害を知った時から5年間に時効期間が延長されています。
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- 協議による時効完成猶予制度の新設
- 当事者間で権利に関する協議を行う旨の書面又は電磁的記録による合意があった時は、
・合意があった時から1年経過時
・合意で協議期間1年未満と定められたときは、その期間を経過したとき
・当事者の一方が相手方に協議続行拒絶を書面又は電磁的記録で通知したときから6ヵ月経過したとき
のいずれか早い時まで時効は完成しない。とされています。