民事調停は、裁判所に申し立てることにより行われますが、判決ではなく当事者同士の合意により解決が図られますので、裁判外紛争解決手続(ADR)の一つとされています。
訴訟を提起する(裁判)と比較して費用が安くすむため債権額が少ない場合や、相手が話し合いに応じる姿勢はあるが話がまとまらないといったケースなどで利用されることが多い手続きです。
最終的に合意することができた場合は調停調書が作成されます。この調停調書は裁判での判決と同じ効力があります。
また、手続きも訴訟と比較すると簡易なため、債権回収において民事調停を検討なさっている場合、債権者ご自身で手続きを行うことも可能です。
ただし、相手が話し合いに応じない場合や調停に出頭しないなど調停が成立しなかった場合は、改めて訴訟提起することになりますので、民事調停の手続きに掛かった時間が無駄になってしまうなどデメリットもあります。
そのため、債権回収において民事調停を利用するかどうかは、民事調停を良く理解し、十分検討されてから手続きを進められることが望ましいと言えるでしょう。
民事調停のメリット
費用が安い
民事調停を裁判所に申し立てる場合、裁判所に申立手数料を納めますが、この申立手数料は訴訟の提起(裁判)をする場合と比べ、約半額~それ以下となっています。
例えば、債権額が1000万円の場合、訴訟の提起にかかる申立費用は50,000円ですが、民事調停の申立費用は25,000円です。
また、調停が不成立となり訴訟を提起する場合、調停終了してから2週間以内であれば、訴訟の提起にかかる申立手数料は民事調停の申立時に納めた申立手数料を差し引いた分で済みます。
余談ですが、平成28年熊本地震に起因する民事に関する紛争については、平成28年4月14日から平成31年3月31日までの間に、裁判所に民事調停を申立てをする場合に申立手数料を免除する特例措置がとられています。
平成28年6月24日,「平成28年熊本地震による災害についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令の一部を改正する政令」が公布・施行されました。
これにより,被災地区に住所等を有していた方が,平成28年熊本地震に起因する民事に関する紛争について,裁判所に民事調停の申立てをする場合,申立手数料が免除されることとなりました。
もし該当される方は、この特例を利用して民事調停を申し立てることで、さらに費用を抑えることが可能です。
手続きが容易
民事調停の申立は、簡易裁判所に用意してある申立書を記入して申立手数料及び予納郵便切手(裁判所により額が異なります)と一緒に裁判所へ提出します。
そのため、特に法律の知識が無くても債権者の方ご自身で行うことが可能です。
裁判と比較して解決までの時間が短い
民事調停は申立がされてから調停成立まで、2~3回開かれる調停期日を経て約3ヶ月ほどで終了します。
そのため、裁判と比較して紛争解決に要する時間は短いといえます。
裁判による判決と同じ効果を期待できる
民事調停が成立した場合、裁判所書記官が内容を記載した調停調書が交付されます。
調停調書は裁判による判決と同じ効果がありますので、後から不服申立を行うと行ったことはできません。
また、調停の内容が守られなかったときは、調停調書が債務名義となり強制執行が可能です。
公開されない
裁判の場合は原則として誰でも傍聴ができますが、民事調停は非公開の席で行われます。
したがって、紛争の原因や調停の内容などを第三者に知られることはありません。
時効の中断ができる
民事調停の申立は民法第147条の時効中断事由である請求に該当するため、時効が中断されます。
ただし調停が不成立となった場合、1ヶ月以内に訴訟を提起しなければ、時効の中断はなかったこととなってしまいますので注意が必要です。
民事調停のデメリット
相手の住所を管轄する簡易裁判所に申立が必要
民事調停の申立は、原則として相手方の住所を管轄する簡易裁判所に行わなければなりません。
例えば申し立てる債権者が福岡市在住で、相手方である債務者が東京23区内に住所がある場合、東京簡易裁判所へ申し立てることになります。
このように相手方と離れている場合、債権者である申立人の時間や費用の負担が大きくなってしまいます。
また相手方の住所が不明の時は、訴訟の提起(裁判)であれば公示送達という手段がありますが、民事調停では公示送達が利用できないため、民事調停の申立自体が難しいと言えるでしょう。
公示送達とは
あなたの意思表示を相手方に到達させたいが,相手方が誰であるか分からないため,又は,相手方の住所が分からない(相手方が法人の場合には,法人及び代表者の所在が分からないことが必要)ために,意思表示を到達させることができない場合に,その意思表示を到達させるための手続です。
不成立の場合、調停に要した時間が無駄になる
民事調停は、相手方と調停委員を挟んで話し合い、合意による解決を目指します。
間に入る調停委員は、双方の意見を聞いてアドバイスを行うオブザーバー的な役割ですので、合意するためにこうしなさいといった強制力はありません。
したがって相手が協力的で無い場合は、不成立に終わってしまうことも多々あります。
また相手方が調停に出頭しなかった場合などにも、特にペナルティなどはありませんので、そのまま不成立となります。
民事調停が不成立で終わってしまうと結局訴訟を提起することとなり、調停の申し立てから不成立までの時間が無駄となってしまいますので、民事調停を申し立てる前に、調停成立の可能性がどのくらいあるかということを良く検討しておく必要があると言えます。
強制執行が必要となった時、自身での手続きは難しい
民事調停が成立しても、その内容が履行されない場合、強制執行により債権回収を図ることが可能です。
ただし強制執行の手続きは、ご自身で行うには難しい手続きであると言えます。
その場合、手続きを弁護士に依頼することになりますが弁護士費用が発生しますので、この費用なども含めて民事調停を申し立てる前に費用対効果などを良く検討しておく必要があるでしょう。
以上のように民事調停にはメリットとデメリットがあります。
ご自身で民事調停の申し立てを行う前に弁護士へご相談いただけましたら、民事調停に対するアドバイスなども行うことができます。
弁護士法人高田総合法律事務所では、このようなご相談につきましても初回無料にて受け付けておりますので、ご遠慮なくご相談予約をお願い致します。