債権回収の方法として、弁護士の実務として一般的には、内容証明郵便の送付で回収の見込みが無い場合は、訴訟を提起つまり裁判を行うということになります。
訴訟以外に、支払督促や民事調停、少額訴訟などの方法もありますが、これらの方法を弁護士が活用するケースはほとんどありません。
いずれの方法も、相手が応じない場合や異議申立などにより通常の裁判に移行してしまいますので、結果として時間が余計に掛かってしまうことになり解決が遅れる可能性が大きいためです。
訴訟を提起した場合、訴訟上の和解もしくは判決により債権回収を行うこととなります
訴訟上の和解
民事裁判では、債権回収の案件に限らず、裁判になったら判決が出るまで必ず闘い抜くという訳ではありません。
特に相手側(被告)がこちら側(原告)の主張を認めている場合などでは、和解で裁判が終了するケースが多いといえます。
原告側としては、訴訟提起までしたのだから判決をもらいたいといった気持ちをお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
しかし、判決までとなれば時間も掛かりますし、必ず勝訴すると行った保証はありません。
また勝訴したとしても、控訴された場合はさらに解決までの時間が延びてしまいます。
裁判所としても、全ての案件を判決まで争っていたら時間も手間も掛かってしまうため、裁判官は判決を出す前に和解を勧めます。
訴訟上の和解が成立した場合は、「和解調書」が作成されます。
和解調書は「債務名義」となりますので、和解の内容が守られなければ強制執行の手続きを行えます。
判決により支払えとなるより、和解で支払うとなった場合の方が、心理的に支払いの約束が守られやすいと言われています。
したがって訴訟提起後は、早期解決のためにも訴訟上の和解をすることも視野に入れて裁判を進めていきます。
判決
原告と被告の主張が対立した場合、どちらかあるいは双方が和解に応じなければ、裁判官が判決を下す事になります。
訴訟を提起してから判決までは、原告と被告双方が準備書面や答弁書の書類にて主張と反論を行います。
裁判官は提出された書類から争点を整理し、双方の主張を証拠などと照らし合わせ、どちらの主張が正しいかを判断して最終的に判決を言い渡します。
判決に不服があるとして控訴されない場合は判決が確定します。
この控訴期間は第一審判決正本が送達された日の翌日から起算して2週間です。
勝訴の判決を得た場合、判決にしたがって相手側が債務を支払えば問題ありませんが、支払いが行われなければ判決確定後に強制執行の手続きをすることになります。
また訴訟を提起する時の訴状には、通常、仮執行宣言を求めますので、原告が勝訴した場合には判決に仮執行宣言が付与されています。
そのため、仮に相手側が控訴したとしても強制執行は可能です。
裁判による債権回収のメリット
債権回収には様々なケースがありますが、裁判まで行くケースの多くは、相手が請求にまったく応じず無視したり、のらりくらりと支払いを引き延ばされて回収の目処が立たないといったことがよく見受けられます。
しかし、裁判となれば相手側も応じざるを得なくなります。
もし裁判まで無視してしまうと、一方的に敗訴となってしまうためです。
したがって債権回収で訴訟を提起する最大のメリットは、相手を強制的にこちらの土俵に上げることができることだといえるでしょう。
また法人の場合で、裁判で勝訴しても相手が事実上の倒産状態で債権回収を諦めざるを得ない場合もありえます。
その場合、損金として処理できることで税理上のメリットがあるといえます。