債権回収で裁判を行い判決が出たにもかかわらず、支払いがなされない場合は強制執行(差押え)の手続きを行うことになります。
強制執行は、裁判の判決だけではなく、和解調書・調停調書・仮執行宣言付支払督促などの債務名義でも手続きができます。
強制執行を行うためには、差し押さえる相手の財産を先に把握しておく必要があります。
債務名義
強制執行を行うためには、必ず債務名義が必要となります。
債務名義とは,強制執行によって実現されることが予定される請求権の存在,範囲,債権者,債務者を表示した公の文書のことです。
債務名義には以下のようなものがあります。
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- 確定判決
- 訴訟を提起して「○○円支払え」などとと命じている判決が出て、控訴期間が過ぎ判決が確定したもの。
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- 仮執行宣言付判決
- 「この判決は仮に執行することができる。」などという仮執行の宣言が付された判決。確定しなくても執行可能。
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- 和解調書
- 訴訟を提起して訴訟上の和解が成立し、裁判所により作成されたもの。
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- 調停調書
- 民事調停での合意に至り、裁判所により作成されたもの
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- 仮執行宣言付支払督促
- 支払督促の手続きにより裁判所が仮執行宣言を相手方に送付し2週間以内に異議申立が無い場合。
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- 強制執行認諾文言付公正証書
- 公証人役場において作成した公正証書で強制執行認諾文言が付いたもの。金銭債権にのみ有効。
強制執行により差押えを行う財産
債権回収の強制執行(差押え)は、不動産に対して行う不動産執行手続、銀行の預金や給料などの債権執行手続、現金や貴金属、裏書が禁止されていない有価証券(株券、国債、手形、小切手など)などに対する動産執行手続などがあります。
また自動車は動産ですが、登録ができるため準不動産として取り扱われます。
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- 不動産執行手続
- 土地・建物(自宅や自社ビルなど)
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- 準不動産執行手続
- 自動車・船舶・建設機械など登記・登録が可能な動産
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- 動産執行手続
- 現金・貴金属・裏書が禁止されていない有価証券など
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- 債権執行手続
- 銀行預金・給料・売掛金など
強制執行の注意点
強制執行は差し押さえる財産を指定して行うため、手続きの前に相手の財産を調査する必要があります。
また、単に財産が存在することだけではなく、例えば不動産の場合、抵当権はどうなっているのかといったことなども調査しておかなければ、差し押さえても空振りに終わるリスクがあります。
もし不動産に抵当権が付いている場合、競売により換価しても抵当権者に優先権があるため、回収できない可能性があるためです。
他にも差し押さえる財産によって、以下の様な点に注意が必要です。。
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- 不動産
- 法務局で登記簿により抵当権等を調査する。
抵当権・根抵当権などの設定がなされていた場合、回収不能の可能性がある。
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- 自動車など
- リースやローンの支払い中であった場合、所有権が債務者ではないため差押えできない。
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- 銀行預金
- 弁護士会照会制度により「預金口座の有無」「支店名」「口座科目」「預金残高(回答日時点)」の情報を調べることができるが、一部の銀行に限られる。
また、銀行口座が判明していれば差押え可能だが、預金が債権額に満たない可能性がある。
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- 給料
- 原則4分の1まで(養育費等のたまの差押えは2分の1まで)しか差押えができない。
ただし、一度差押えを行えば、それ以降毎月差押えの効果は継続。